年末調整とは、毎月の給与から差し引かれた所得税の合計と、1年間に本当に納めるべき所得税との差を、勤め先が年末に精算する手続きです。会社員は、勤め先から配られる申告書に控除の情報を書いて出すだけで、払いすぎた税金が戻ってきます。2026年は税制改正で基礎控除が引き上げられ、合計所得金額が489万円以下の人の基礎控除は104万円になりました。毎月の源泉徴収は改正前の税額表で計算されているため、その差は今年の年末調整でまとめて精算されます。
「毎年なんとなく書いて出している」という人も多い年末調整ですが、書き漏れがあると、受けられたはずの控除を受けられません。この記事では、国税庁の資料をもとに、年末調整の仕組み、令和8年分の変更点、申告書の書き方のポイント、年末調整ではできない手続きを、当サイトの試算とあわせて整理します。
年末調整とは
国税庁によると、会社などの給与の支払者は、毎月の給与を支払う際に所得税と復興特別所得税を差し引いて納めています(源泉徴収)。ただ、1年間に源泉徴収した税額の合計は、その人が1年間に納めるべき税額と必ずしも一致しません。そこで、1年分の給与と各種の控除をもとに税額を計算し直し、差額を精算するのが年末調整です。
計算の順番は、次のとおりです。
| 順番 | すること |
|---|---|
| 1 | 1年間の給与の合計から、給与所得控除後の金額を求める |
| 2 | そこから基礎控除・扶養控除・社会保険料控除・生命保険料控除などの所得控除を差し引く |
| 3 | 残った金額に所得税の税率をかけて税額を出す(住宅ローン控除があれば差し引く) |
| 4 | 102.1%をかけて、復興特別所得税を含めた年税額を出す |
| 5 | 源泉徴収した合計と比べ、多ければ還付、少なければ追加で徴収する |
出典:国税庁「No.2662 年末調整のしかた」をもとに当サイト作成
年末調整の対象になる人、ならない人
年末調整の対象になるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤め先に出している人です。12月に行う年末調整の対象は、1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職して年末まで勤務している人です(国税庁)。
| 区分 | 年末調整 | 主な例 |
|---|---|---|
| 対象になる | 勤め先が行う | 1年を通じて勤務している人、年の途中で就職して年末まで勤務している人 |
| 対象にならない | 自分で確定申告する | 1年間の給与が2,000万円を超える人、年の途中で退職して年末調整を受けていない人(一部の例外を除く) |
出典:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」をもとに当サイト作成
年の途中で転職した人は、前の勤め先から受け取った「給与所得の源泉徴収票」を新しい勤め先に出すと、前の勤め先の給与も含めて年末調整をしてもらえます。源泉徴収票を確認できないときは、年末調整は行われず、自分で確定申告をして精算します(国税庁)。なお、4月に就職した新社会人のように年の途中から働き始めた人も、基礎控除や扶養控除は月割りではなく全額が認められます。
令和8年分の変更点
令和8年度税制改正により、2026年12月1日から次の改正が施行され、令和8年分の所得税から適用されます(国税庁)。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 基礎控除の引上げ | 合計所得金額489万円以下の人は104万円(令和7年分は所得に応じて58万〜95万円) |
| 給与所得控除の最低保障額の引上げ | 65万円 → 74万円 |
| 扶養親族などの所得要件の改正 | 扶養親族の所得要件が58万円以下 → 62万円以下(給与だけなら年収136万円以下) |
| 生命保険料控除の特例 | 23歳未満の扶養親族がいる人は、一般生命保険料控除の上限が4万円 → 6万円 |
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた(昨年と比べて変わった点)」をもとに当サイト作成
国税庁によると、2026年11月までの毎月の源泉徴収には変更がありません。12月に行う年末調整で、引上げ後の基礎控除などを使って1年分の税額を計算し、改正前の税額表で源泉徴収した額との差を精算します。毎月の源泉徴収税額表が改正後のものになるのは、2027年1月以後に支払う給与からです。
基礎控除は多くの会社員で16万〜36万円増える
基礎控除は、誰でも受けられる所得控除です。国税庁のタックスアンサーで、令和7年分と令和8年分を比べると次のようになります。
| 合計所得金額 | 令和7年分 | 令和8・9年分 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 | 104万円 |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 | 104万円 |
| 489万円超655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
出典:国税庁「No.1199 基礎控除」をもとに当サイト作成
給与だけの人なら、合計所得金額489万円は年収およそ665万円にあたります(国税庁)。年収300〜400万円台の会社員の多くは「132万円超336万円以下」に入り、基礎控除は88万円から104万円へと16万円増えます。年収およそ475万〜665万円の人(合計所得金額336万円超489万円以下)は、68万円から104万円へと36万円増えます。
扶養に入れられる家族の範囲が広がる
扶養親族などの所得要件も変わりました。給与だけの家族なら、年収で見ると次のようになります。
| 区分 | 令和7年分(給与収入の目安) | 令和8・9年分(給与収入の目安) |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者 | 123万円以下 | 136万円以下 |
| 特定親族(19〜22歳の子など) | 123万円超188万円以下 | 136万円超197万円以下 |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 123万円超201万5,999円以下 | 136万円超207万円以下 |
| 勤労学生 | 150万円以下 | 163万円以下 |
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた(昨年と比べて変わった点)」をもとに当サイト作成
この改正で新たに扶養に入れられるようになった家族がいる人は、「扶養控除等(異動)申告書」を出し直す必要があります。国税庁は、その際「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと書くよう案内しています。アルバイトをしている学生の子や、パートで働く配偶者がいる人は、今年の年収を確かめておきましょう。家族の働き方と「年収の壁」の関係は、年収の壁とは?で詳しく紹介しています。
26歳・年収360万円の場合の試算
基礎控除の引上げで、税金がどれだけ変わるかを試算します。月給30万円(年収360万円、賞与なし)、扶養家族なし、社会保険料は年52万8,840円、ほかの控除はない会社員の例です。
| 項目 | 令和7年分のルール | 令和8年分のルール |
|---|---|---|
| 給与所得控除後の金額 | 244万円 | 244万円 |
| 社会保険料控除 | 52万8,840円 | 52万8,840円 |
| 基礎控除 | 88万円 | 104万円 |
| 課税される所得金額 | 103万1,000円 | 87万1,000円 |
| 年税額(復興特別所得税を含む) | 5万2,600円 | 4万4,400円 |
※当サイトの試算。社会保険料は東京都の協会けんぽに加入する40歳未満の例(給与明細の見方の早見表による)。給与所得控除後の金額は計算式で求めた概算で、実際の年末調整では国税庁の表を使うため、数百円程度ずれることがあります
この例では、1年間の所得税が約8,200円少なくなります。毎月の源泉徴収は改正前のルールで差し引かれているので、この差は年末調整の還付として戻ってくる計算です。
年末調整の流れ
一般的には、秋に勤め先から申告書が配られ、提出した内容をもとに、その年最後の給与の支払いのときに精算されます。国税庁によると、年末調整は給与の支払者がその年最後に給与を支払う際に行うものです。
| 時期の目安 | 従業員がすること | 勤め先がすること |
|---|---|---|
| 10〜11月ごろ | 保険会社などから届く控除証明書を保管する | 申告書を配る |
| 11月ごろ | 申告書を書き、控除証明書を添えて出す | 内容を確認する |
| 12月(その年最後の給与) | 給与明細で精算額を確かめる | 1年分の税額を計算し、還付・徴収する |
| 翌年1月まで | 源泉徴収票を受け取って保管する | 源泉徴収票を交付する |
※国税庁の資料をもとにした当サイトの整理。時期は勤め先によって異なります
提出する申告書は主に3種類
| 申告書 | 書くこと | 主な対象 |
|---|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 扶養している家族、障害者や寡婦・ひとり親などに当てはまるか | 全員(勤め先が1か所の人) |
| 給与所得者の基礎控除申告書(配偶者や19〜22歳の子がいる人は、配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書も) | 自分の合計所得金額の見積り、配偶者や19〜22歳の子の所得 | 全員。配偶者や特定親族がいる人は該当欄も |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料、地震保険料、自分で払った社会保険料、iDeCoの掛金など | 該当する支払いがある人 |
出典:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」ほかをもとに当サイト作成
令和8年分は、基礎控除申告書に「合計所得金額に応じた改正後の基礎控除額」を正しく書く必要があると国税庁は注意しています。配偶者や特定親族に給与収入がある場合は、改正後の給与所得控除(最低74万円)で計算した所得で書きます。
保険料控除申告書の書き方のポイント
生命保険料控除
生命保険料控除は、支払った保険料に応じて所得から差し引ける金額が決まり、合計の上限は12万円です(国税庁)。2012年1月1日以後に結んだ「新契約」の場合、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料のそれぞれについて、次のように控除額が決まります。
| 年間の支払保険料(新契約) | 控除額 |
|---|---|
| 2万円以下 | 全額 |
| 2万円超4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 |
| 4万円超8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 |
| 8万円超 | 一律4万円 |
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」をもとに当サイト作成
令和8年分からは、23歳未満の扶養親族がいる人の新契約の一般生命保険料控除が、支払保険料12万円超で一律6万円まで広がりました。子どもがいる家庭は、このぶん控除が増える可能性があります。書くときは、保険会社から届く控除証明書に書かれた金額を写し、証明書を添付します。
地震保険料、社会保険料、iDeCo
地震保険料は、年間5万円までは全額、5万円を超えると一律5万円が控除されます(国税庁)。
社会保険料控除は、給与から天引きされた分は勤め先が把握しているので書く必要はありません。自分で払った国民年金保険料(転職の空白期間や、家族の分を払った場合など)がある人は、控除証明書を添えて申告します。
iDeCoの掛金も全額が所得控除になります。国民年金基金連合会によると、個人で払い込んでいる人には毎年10月に「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届くので、保険料控除申告書に書いて添付します。給与から天引きされる「事業主払込」の人は、勤め先が把握しているため証明書は発行されません。iDeCoの節税効果はiDeCoとは?で試算しています。
年末調整ではできないこと
年末調整で受けられない控除もあります。次の場合は、翌年に自分で確定申告をします。
| 手続き | 年末調整 | どうするか |
|---|---|---|
| 医療費控除・セルフメディケーション税制 | できない | 確定申告をする。詳しくは医療費控除はいくらから? |
| ふるさと納税の寄附金控除 | できない | ワンストップ特例(寄附先が5団体以内)か確定申告。詳しくはふるさと納税の仕組みと上限額の計算 |
| 年末調整を受けなかった年の精算 | ― | 翌年1月1日から5年以内なら還付申告ができる(国税庁) |
※国税庁の資料をもとにした当サイトの整理
医療費控除で確定申告をすると、ふるさと納税のワンストップ特例は使えなくなる点にも注意が必要です(総務省)。
よくある質問
還付金はいつ戻ってきますか
年末調整は、勤め先がその年最後に給与を支払うときに行います(国税庁)。多くの場合、12月の給与(勤め先によっては1月の給与)で、給与明細に精算額が載ります。
年末調整の書類を出し忘れたら、どうなりますか
扶養控除等(異動)申告書を出していないと、年末調整の対象になりません(国税庁)。保険料控除申告書を出し忘れた場合も、その控除は反映されません。その場合は、翌年に確定申告(還付申告)をすれば、受けられなかった控除を申告できます。
年収が少ない配偶者や学生の子は、扶養に入れられますか
令和8年分は、給与だけなら年収136万円以下で扶養親族、19〜22歳の子は年収197万円以下まで「特定親族特別控除」の対象になります(国税庁)。社会保険の扶養は別の基準なので、年収の壁とは?もあわせて確かめてください。
まとめ
年末調整は、毎月の源泉徴収で差し引いた所得税と、1年間に納めるべき所得税との差を、勤め先が精算する手続きです。令和8年分は、合計所得金額489万円以下の人の基礎控除が104万円に引き上げられ、扶養親族の所得要件も年収136万円以下に広がりました。当サイトの試算では、年収360万円の会社員の所得税は約8,200円少なくなり、その差は今年の年末調整で戻ってきます。
まずは、10月から11月に届く生命保険や地震保険、iDeCoの控除証明書を1つの封筒にまとめておいてください。申告書が配られたら、家族の今年の年収と、控除証明書の金額を書き写すだけで、受けられる控除を漏れなく申告できます。
参考文献
- 国税庁「No.2662 年末調整のしかた」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「No.1199 基礎控除」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「No.1145 地震保険料控除」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた(昨年と比べて変わった点)」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(2026年5月)
- 国税庁「No.2030 還付申告」(2026年10月1日閲覧)
- 国民年金基金連合会「よくあるご質問」(2026年10月1日閲覧)
- 総務省「ワンストップ特例を申請する皆様へ」(2016年8月)

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