金融詐欺から身を守るには、「お金の話を、相手の用意した連絡手段の中で決めない」ことが基本です。警察庁によると、2026年1〜8月の特殊詐欺(SNS型投資・ロマンス詐欺を含む)の被害は2万9,687件、2,360.7億円で、前の年の同じ時期より33.2%増えました。中でもSNS型投資詐欺は937.4億円、警察官を名乗るニセ警察詐欺は728.6億円にのぼります。上半期のニセ警察詐欺の被害件数は30代が664件で、高齢者だけの問題ではありません。
詐欺の手口は毎年のように形を変えるため、一つひとつの手口を覚えるより、共通するサインと確かめ方を知っておくほうが役に立ちます。この記事では、警察庁・金融庁・預金保険機構・国民生活センター・消費者庁の情報をもとに、いま被害が多い手口、共通するサイン、お金を動かす前の確認手順、被害にあったときの連絡先を整理します。
いま被害が多い金融詐欺
警察庁は2026年から統計の分け方を変え、SNS型投資・ロマンス詐欺を「特殊詐欺」の一つの手口として数えるようになりました。被害が急増している「ニセ警察詐欺」も独立した手口として集計しています。
| 手口(2026年1〜8月) | 認知件数 | 被害額 | 前年同期比(被害額) |
|---|---|---|---|
| 特殊詐欺の合計 | 2万9,687件 | 2,360.7億円 | 33.2%増 |
| うちSNS型投資詐欺 | 7,097件 | 937.4億円 | 53.8%増 |
| うちニセ警察詐欺 | 6,346件 | 728.6億円 | 27.0%増 |
| うちSNS型ロマンス詐欺 | 3,506件 | 325.8億円 | 0.8%増 |
出典:警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」をもとに当サイト作成
警察庁(2026年)によると、上半期(1〜6月)の1件あたりの被害額は、SNS型投資詐欺が1,362.5万円、ニセ警察詐欺が1,163.9万円でした。一度だまされると、貯金のほとんどを失いかねない金額です。
SNS型投資詐欺
SNSの広告やダイレクトメッセージで知り合った相手が、投資の話を持ちかけ、LINEなどのグループに誘導して振り込ませる手口です。警察庁によると、2026年上半期の最初の接触はInstagramが1,403件で、前年同期の2倍以上に増えました。被害時の連絡にはLINEが使われたケースが5,658件でした。手口の流れと見分け方は、SNS型投資詐欺の手口と見分け方で詳しく紹介しています。
ニセ警察詐欺
警察官を名乗る人物から電話があり、「逮捕した詐欺グループからあなたのキャッシュカードが見つかった」などと伝えてきます。その後、LINEのビデオ通話に誘導され、ニセの警察手帳や、本人の名前が書かれた逮捕状を見せられることもあります(警察庁)。「あなたも逮捕される」と不安をあおり、「資金を調べる」などの名目でお金を振り込ませます。電話会社や総務省を名乗る電話から始まり、途中で警察官役に代わる流れも報告されています。
警察庁は、本物の警察官は次のことをしないと示しています。
- 電話で、あなたが捜査の対象になっていると伝えること
- メッセージアプリで連絡すること
- 警察手帳や逮捕状の画像を送ること
- 個人のスマートフォンに突然ビデオ通話をかけること
証券口座の乗っ取り(フィッシング)
証券会社のウェブサイトを装ったニセのサイトでIDやパスワードを盗み、本人になりすまして口座の株を売ったり、別の株を買ったりする被害も続いています。金融庁は、見覚えのある送信者からのメールやSMSであっても、メッセージ内のリンクを開かないよう注意を呼びかけています(2026年10月9日更新)。
後払い決済を使った不当な請求
詐欺そのものではなくても、後払い決済を使ったトラブルも増えています。国民生活センター(2025年)によると、後払い決済サービスに関わる販売方法に問題のある相談は、2021年度の1万4,555件から2024年度には4万3,964件に増えました。解約したはずの定期購入の請求が続く、買った覚えのない商品の請求が届く、といった相談が寄せられています。
手口が違っても共通するサイン
手口はさまざまでも、詐欺には共通するサインがあります。
| サイン | よくある言い方・状況 | 本当の金融機関・警察なら |
|---|---|---|
| 必ずもうかる・元本保証 | 「月利10%」「元本は保証します」 | 投資で元本と高い利回りを同時に約束することはない |
| 急がせる・秘密にさせる | 「今日中に」「家族には言わないで」 | 考える時間を奪うことはしない |
| 個人名義の口座に振り込ませる | 「担当者の口座へ」「この暗号資産アドレスへ」 | 個人名義の口座を指定しない |
| 連絡手段をLINEやSNSに移す | 「詳しくはLINEで」 | 警察はメッセージアプリで連絡しない |
| リンクから入力させる | 「口座が凍結されます。こちらから確認を」 | メール・SMSのリンクからパスワードを入力させない |
※警察庁・金融庁の注意喚起をもとに当サイト作成
一つでも当てはまったら、その場でお金を動かさないことです。警察庁(2026年)によると、上半期の特殊詐欺のうち、被害金を暗号資産で送らせる手口は3,498件、409.6億円で、前年同期から8割以上増えました。暗号資産で送ったお金は、銀行振込に比べて取り戻すのがさらに難しくなります。
お金を動かす前の確かめ方
振り込みや入金、パスワードの入力を求められたときは、次の順で確かめます。
| 順番 | すること | 具体的な方法 |
|---|---|---|
| 1 | 相手の連絡手段を使わない | 電話を切る。メッセージのリンクは開かない |
| 2 | 自分で調べた連絡先にかけ直す | 警察なら最寄りの警察署、銀行や証券会社なら公式サイトやカードの裏の番号 |
| 3 | 業者が登録を受けているか確かめる | 金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で名前を検索する |
| 4 | 家族や相談窓口に話す | 一人で決めない。「秘密に」と言われたときほど話す |
※警察庁・金融庁の情報をもとに当サイト作成
金融庁によると、投資の勧誘や取引をするには金融庁への登録が必要で、登録を受けていない業者との取引では、出金を断られたり法外な手数料を求められたりするトラブルが多く寄せられています。金融庁は、無登録で金融商品取引業を行う者の名前も公表しています。
口座の乗っ取りを防ぐ設定
金融庁は、証券口座などの不正アクセスを防ぐために、次の対策を呼びかけています。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 多要素認証を有効にする | ログイン・取引・出金・出金先口座の変更のときに、パスワード以外の確認を加える |
| 通知サービスを使う | ログインや取引があったときにメールなどで知らせてもらう |
| パスワードを使い回さない | 長く、推測されにくいものにする |
| 口座をこまめに確認する | 身に覚えのない取引がないか見る |
出典:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」をもとに当サイト作成
設定は各証券会社・銀行のアプリや会員ページでできます。新NISAなどで証券口座を持っている人は、今日のうちに多要素認証が有効になっているかを確かめておくと安心です。
被害にあったとき・迷ったときの連絡先
だまされたかもしれないと思ったら、時間をおかずに連絡します。振込先の口座が早く凍結されれば、残っているお金が戻る可能性があるためです。
| 状況 | 連絡先 |
|---|---|
| 振り込んでしまった | 振込先の金融機関と警察にすぐ連絡する |
| 警察官を名乗る電話があった | 相手の所属・氏名・内線番号を聞いていったん切り、最寄りの警察署に自分でかけ直す |
| 契約や請求のトラブル | 消費者ホットライン「188」(最寄りの消費生活センターにつながる) |
| 金融商品・金融機関についての相談 | 金融庁 金融サービス利用者相談室 |
| 証券口座に身に覚えのない取引 | 証券会社にすぐ連絡し、パスワードを変更する |
出典:警察庁、消費者庁、金融庁、預金保険機構の情報をもとに当サイト作成
振り込め詐欺救済法では、犯罪に使われた口座を凍結し、残高を被害者に分配する手続きがあります。預金保険機構によると、対象の口座や手続きの状況は、同機構のウェブサイトで公告されています。
自分の銀行口座やスマートフォンを人に売ったり貸したりすることも、詐欺に加担することになります。警察庁(2026年)によると、上半期には預貯金口座や携帯電話の不正な売買など、特殊詐欺を助ける犯罪で3,387件が検挙されています。「口座を貸すだけで報酬」という誘いには乗らないでください。
よくある質問
自分はだまされないと思うのですが、それでも注意が必要ですか
警察庁の統計では、ニセ警察詐欺の上半期の被害は30代が664件で、70代・60代に次いで多くなっています。犯人は相手の不安や焦りにつけこむため、知識がある人でも、急がされると判断を誤ることがあります。手口を知っておくことに加えて、「その場でお金を動かさない」と決めておくことが防ぐ力になります。
家族が詐欺にあっていないか心配です
親の世代には、警察や銀行を名乗る電話が来たら、いったん切って家族に連絡するよう、事前に話しておくと効果的です。SNS型投資詐欺は50代・60代の被害が多い手口です。
投資の話が本物かどうか、どう見分ければよいですか
相手の業者名を金融庁の登録業者一覧で調べ、登録がなければ取引しません。登録があっても、その業者を名乗るニセの勧誘のこともあるため、連絡先は必ず公式サイトで確かめます。正規の商品かどうかの見分け方は金融商品の選び方で紹介しています。
まとめ
金融詐欺の被害は、2026年1〜8月だけで2,360.7億円にのぼり、SNS型投資詐欺とニセ警察詐欺が大きく増えています。手口は違っても、「必ずもうかる」「急がせる」「個人の口座や暗号資産に送らせる」「連絡をLINEに移す」「リンクから入力させる」というサインは共通です。お金を動かす前に、相手の連絡手段を使わず、自分で調べた連絡先で確かめます。
まずは今日、使っている証券口座と銀行アプリを開いて、多要素認証とログイン通知が有効になっているかを確かめてください。あわせて、家族と「警察や銀行を名乗る電話が来たら、いったん切って連絡し合う」と決めておけば、いざというときに一人で判断せずに済みます。お金の基本の全体像は金融リテラシーってなに?にまとめています。
参考文献
- 警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年10月2日)
- 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年7月31日)
- 警察庁「ニセ警察詐欺に注意!」(2026年10月13日閲覧)
- 金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」(2026年10月9日更新)
- 金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」(2026年10月13日閲覧)
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」(2026年10月13日閲覧)
- 金融庁「金融サービス利用者相談室」(2026年10月13日閲覧)
- 国民生活センター「増加し続ける後払い決済サービスが関連する消費者トラブル」(2025年7月2日)
- 消費者庁「消費者ホットライン」(2026年10月13日閲覧)
- 預金保険機構「振り込め詐欺救済法に基づく公告」(2026年10月13日閲覧)

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