積立投資とは、あらかじめ決めた金額を、毎月などの決まったタイミングで買い続ける投資の方法です。金融庁は、投資のリスクをできるだけ抑えながら安定的に資産を形成する方法として、「長期・積立・分散投資」を有効な選択肢の一つに挙げています。ただし、積立投資でも元本は保証されず、必ず利益が出るわけではありません。
新NISAのつみたて投資枠で毎月いくらか積み立て始めたものの、なぜ積立が勧められるのかはよく分からない。値下がりしたときに続けていいのか不安になる。そんな方に向けて、この記事では長期・積立・分散の考え方を金融庁の資料をもとに整理し、ドル・コスト平均法の仕組みと注意点、積立額の決め方まで順に紹介します。
積み立てる商品の多くは投資信託です。投資信託の仕組みは投資信託とは?で、制度の使い方は新NISAとは?で詳しく解説しています。
長期・積立・分散は、リスクを抑えながら続けるための3点セット
金融庁の資料では、3つの考え方の役割が次のように整理されています。
| 考え方 | 期待できること |
|---|---|
| 積立投資 | 一度にまとめて買うのに比べ、高値でまとめて買ってしまうおそれを減らせる |
| 分散投資 | 資産全体が、特定のリスクから受ける影響を小さくできる |
| 長期投資 | 積立・分散を長く続けることで、複利の効果も生かしながら安定的な資産形成に取り組める |
出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」をもとに当サイト作成
3つは、どれか1つだけを選ぶものではありません。組み合わせることで、投資に伴うリスクを可能な限り軽減しながら資産形成に取り組めるというのが、金融庁の考え方です(金融庁・2024年)。
同じ資料で金融庁は、NISAを使う人に理解してほしいこととして、次の3点を挙げています。1つ目は、自分のライフプランを踏まえ、どんなお金がいつ必要になり、どんな資産形成が必要かをよく考えること。2つ目は、投資には元本割れのおそれもある一方で、長期・積立・分散投資を活用すればリスクを可能な限り抑えながら資産形成に取り組めること。3つ目は、NISA以外の方法や制度も含めて、適切に組み合わせることです(金融庁・2024年)。
積立投資は、この2つ目にあたります。1つ目のライフプランは生活設計(ライフプラン)の立て方で、3つ目の制度の組み合わせはiDeCoとは?でも扱っています。以下、長期・積立・分散を1つずつ見ていきます。
長期:続ける期間が長いほど、結果のばらつきは小さくなった
投資の結果は、始めたタイミングによって大きく変わります。金融庁(2023年)の「NISA早わかりガイドブック」には、1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資を行い、5年間と20年間それぞれ保有した場合の結果が示されています。
| 保有期間 | 100万円の投資が、その後いくらになったか |
|---|---|
| 5年 | 74万円〜176万円 |
| 20年 | 186万円〜331万円 |
出典:金融庁「NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)をもとに当サイト作成
保有期間が5年だと、始めた時期によっては大きな収益が出ることもあれば、元本割れになることもありました。20年では、どの時点から始めても収益は安定し、少なくとも1989年以降のデータでは元本割れになったケースはありませんでした(金融庁・2023年)。
ただし、これは過去のデータに基づくシミュレーションです。同じガイドブックも、将来の投資成果を予想・保証するものではないと断っています。「20年続ければ必ず増える」という意味ではありません。
複利の効果は、始める時期が早いほど大きくなる
長く続けるほど効いてくるのが「複利」です。複利とは、投資や預金で得た収益を元本に加えて運用することで得られる利益のことで、利益がさらに利益を生みます(金融庁・2023年)。
同じガイドブックでは、毎月1万円ずつ積み立てて年3%で運用した場合を比べています(金融庁・2023年)。
| 積立を始めた年齢 | 60歳までの積立額 | 60歳時点の資産 |
|---|---|---|
| 20歳 | 480万円 | 約930万円 |
| 40歳 | 240万円 | 約330万円 |
出典:金融庁「NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)をもとに当サイト作成
積立額の差は2倍ですが、60歳時点の資産の差は3倍近くに広がります(表の数字をもとにした当サイトの試算)。これが、運用期間の長さによる複利の差です。なお、実際の運用では、利回りが毎年一定になることはありません。
積立:ドル・コスト平均法で、買う値段をならす
決まった金額を、定期的に買い続ける方法を「ドル・コスト平均法」といいます。値段が高いときには少なく、安いときには多く買うことになるため、買う値段(購入単価)がならされます(金融庁・2023年)。
金融庁のガイドブックの例で見てみましょう。値動きのある投資信託を、合計4万円分買う場合です。
| 1か月目 | 2か月目 | 3か月目 | 4か月目 | 買えた口数 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 基準価額(1万口あたり) | 1万円 | 2万円 | 5,000円 | 1万円 | |
| 毎月1万円ずつ買う | 1万口 | 5,000口 | 2万口 | 1万口 | 4万5,000口 |
| 1か月目に4万円分まとめて買う | 4万口 | − | − | − | 4万口 |
出典:金融庁「NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)をもとに当サイト作成
同じ4万円でも、毎月1万円ずつ買った場合は4万5,000口を買え、1万口あたりの平均購入単価は約9,000円になりました。まとめて買った場合は1万円です(金融庁・2023年)。
もう一つの利点は、いつ買うかを考えなくて済むことです。「一番高いときに買ってしまった」「一番安いときに買っておけばよかった」という後悔を減らせます。
ドル・コスト平均法でも、損をすることはある
ここは誤解しやすいところです。金融庁は、ドル・コスト平均法で投資をしても確実に利益が得られるわけではなく、買った商品の値段が下がり続けた場合などには損失が出ることもあると注意しています。また、相場が上がり続けている場合などは、最初にまとめて買ったほうが有利なこともあります(金融庁・2023年)。
上の例でも、もし基準価額が1か月目から上がり続けていれば、1か月目にまとめて買ったほうが多くの口数を得られていたはずです。ドル・コスト平均法の役割は、利益を増やすことより、買う時期の偏りによる失敗を減らすことにあると考えると分かりやすくなります。
分散:値動きの違う資産を組み合わせる
分散投資とは、値動きが異なる複数の資産(国内と海外、株式と債券と不動産など)に分けて投資することです。金融庁によると、そうすることで価格の変動をある程度抑えられ、安定的な運用を目指せます。
金融庁(2023年)は、2003年1月から2022年12月まで、毎月末に1万円ずつ株式指数に20年間積み立てた場合のシミュレーションを示しています。総積立額240万円に対し、全世界の株式(MSCIオール)に連動する資産では690万円、日経平均株価に連動する資産では443万円になりました(金融庁・2023年。税金・手数料は考慮していません)。
この例では、日本1か国の株式より、世界中の株式に分けて投資したほうが結果は大きくなっていました。ただし、金融庁も、将来も同じ結果が得られることを保証するものではないとしています(金融庁・2023年)。分散投資は、どれが上がるかを当てる方法というより、どれか1つが大きく下がったときの影響を小さくする方法です。
分散には、地域や資産の分散に加えて、買う時期の分散もあります。毎月決まった額を買う積立投資は、買う時期を分散する方法でもあるわけです。
積立額の決め方と、続け方
毎月の金額は「なくても生活に困らない額」から
毎月いくら積み立てるかについて、金融庁は、なくても生活に困らない金額から始め、それを続けることが大事だとしています(金融庁・2024年)。
生活費や、数年以内に使う予定のお金まで積立に回すと、値下がりしたときに売らざるを得なくなります。まず家計を把握し、急な出費に備えるお金を預金で確保したうえで、残りから積立額を決めると無理がありません。家計の把握のしかたは家計管理の始め方で紹介しています。
少ない金額でも、長く続けると大きな差になります。毎月の金額と年数を変えた試算は、当サイトの積立シミュレーターで確かめられます。たとえば、つみたて投資枠で毎月3万円を40年間、年3%で運用した場合、投資元本1,440万円に対して約2,752万円になるという試算があります(金融庁・2024年。手数料等は考慮していません)。
続け方は人それぞれ。金融庁の4つの試算
金融庁の資料には、積み立て方のパターン別の試算も載っています。いずれも運用利回りを一律年3%とし、手数料等は考慮していないシミュレーションです(金融庁・2024年)。
| パターン | 積み立て方 | 投資元本 | 試算の結果 |
|---|---|---|---|
| コツコツ長く続ける | 毎月3万円を40年間 | 1,440万円 | 約2,752万円 |
| 収入に合わせて増やす | 月1万円から始め、5年ごとに2万円ずつ増やして25年間 | 1,500万円 | 約1,958万円 |
| 早めに枠を使い切る | 毎月10万円を15年間積み立て、その後15年間保有 | 1,800万円 | 約3,525万円 |
| 途中で取り崩す | 毎月5万円を10年間積み立てて100万円を売却し、さらに10年間積み立て | 1,200万円 | 約1,500万円(ほかに売却した100万円) |
出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」をもとに当サイト作成
どのパターンが良いかは、収入の見通しやお金を使う時期によって変わります。金額を少しずつ増やす方法も、途中で取り崩す方法も、積立投資の続け方の一つです。
途中で売ることもできる
積み立ては、できるだけ長く続けると成果につながりやすいとされます。一方で、NISAで積み立てた商品は途中で売ることもでき、お金が必要になったときに一部だけ売るといった使い方もできます(金融庁・2024年)。長く続けることと、必要なときに使うことは両立できます。
積立投資の始め方
金融機関を選ぶ
新NISAで積み立てる場合は、まず口座を開く金融機関を選びます。金融庁の資料では、選ぶときの観点として、取り扱う商品のラインナップ、取引の手数料、メインバンクからの引き落としができるか、積立の場合は最低積立金額や積み立ての頻度が挙げられています(金融庁・2024年)。
商品と金額を決める
次に、積み立てる商品と毎月の金額を決めます。つみたて投資枠と成長投資枠は、どちらか一方だけを使うことも、両方を使うこともできます。成長投資枠でも、つみたて投資枠と同じように積立投資ができます(金融庁・2024年)。目的に合わせて使い分けを考えましょう。
商品を選ぶときは、何に投資するのか、コストはいくらかを目論見書で確かめます。複数の資産や地域に分けて投資する投資信託を1本選ぶ方法もあれば、いくつかの投資信託を組み合わせる方法もあります。
よくある誤解と注意点
積立投資でも元本は保証されない
預金と違い、積立投資でも元本は保証されません。値下がりが続けば、積み立てた金額を下回ることもあります。20年の保有で元本割れがなかったというデータも、あくまで1989年以降の過去の実績です。
手数料が高いと、長く続けるほど差が広がる
長期の積立では、毎年かかるコストの差も積み重なります。金融庁によると、新NISAのつみたて投資枠で買える投資信託は、購入時手数料や解約手数料、口座管理料がゼロで、信託報酬も一定の水準以下のものに限られています(金融庁・2024年)。つみたて投資枠以外で積み立てる場合は、目論見書で手数料を確かめてから選びましょう。
値下がりしたときに、慌ててやめない
ドル・コスト平均法では、値段が下がった月は多くの口数を買えます。値下がりした時期にやめてしまうと、安いときに多く買うという積立投資の仕組みを生かせません。
金融庁のデータでも、5年間の保有では、始めた時期によって100万円が74万円に減ったケースがありました(金融庁・2023年)。値下がりは、積立投資を続けていれば必ず出会う局面です。ここでは、基準価額が1年かけて4割下がり、その後2年かけて元の値段に戻るという仮の値動きで、毎月1万円ずつ積み立てた場合の結果を当サイトで試算しました。
| 値下がりのときの行動 | 3年間で用意したお金 | 3年後の資産 |
|---|---|---|
| 36か月、積み立てを続けた | 36万円 | 約45.7万円 |
| 12か月目(いちばん安いとき)で積み立てを止め、持ち続けた。残りは預金 | 36万円 | 約39.4万円(投資信託約15.4万円+預金24万円) |
| 12か月目に全部売り、残りは預金 | 36万円 | 約33.2万円(売却代金約9.2万円+預金24万円) |
※当サイトの試算。基準価額は1万円から毎月一定の幅で下がって12か月目に6,000円になり、その後24か月かけて1万円に戻るという仮定。税金・手数料は考慮していない。実際の値動きは、この通りになるとは限らず、元の値段に戻らないこともあります
値段は3年後に始めたときと同じ1万円に戻っただけですが、続けた人の資産は約27%増えています。値下がりした時期に多くの口数を買えたため、1万口あたりの平均購入単価が約7,877円まで下がったからです。反対に、いちばん安いときに売ってしまうと、値下がりの損失が確定し、その後の回復も受け取れません。
もちろん、値段が元に戻る保証はありません。値下がりしても続けられるように、最初から無理のない金額に設定しておくことが、結局はいちばんの対策になります。急な出費に備えるお金を別に確保しておく考え方は、生活防衛資金はいくら必要?で紹介しています。
よくある質問
毎月何日に積み立てるのがよいですか
ドル・コスト平均法は、買う時期を分散して値段をならす方法なので、何日に買うかで結果を当てにいくものではありません。給料日の直後など、残高不足にならない日に設定しておくと続けやすくなります(当サイトの考え方)。
値下がりしたら、積立額を増やしたほうがよいですか
値下がりした時期に多く買えれば、平均購入単価は下がります。ただし、さらに値下がりする可能性もあり、生活費や近いうちに使うお金まで回すのは避けるべきです。金融庁は、なくても生活に困らない金額から始めて続けることが大事だとしています(金融庁・2024年)。
一括で買うのと、積み立てるのとではどちらが有利ですか
相場が上がり続ける場合は、最初にまとめて買ったほうが有利なこともあります(金融庁・2023年)。積立投資の役割は、利益を最大にすることより、高値でまとめて買ってしまう失敗を避けることにあります。
まとめ
積立投資は、決まった金額を定期的に買い続ける方法です。金融庁は、長期・積立・分散を組み合わせることで、投資のリスクを可能な限り抑えながら安定的な資産形成に取り組めるとしています。過去のデータでは、保有期間が長いほど結果のばらつきが小さくなり、始める時期が早いほど複利の効果も大きくなりました。
その一方で、ドル・コスト平均法でも損失が出ることはあり、相場によっては一括で買ったほうが有利なこともあります。過去の実績は将来を約束しません。
これから始めるなら、まず家計から「なくても生活に困らない金額」を出してみてください。その金額で、値下がりした月も含めて何年続けられそうかを考えることが、積立額を決めるいちばん確かな手がかりになります。
参考文献
- 金融庁「NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)
- 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(2024年6月、2025年9月改訂)
- 金融庁「資産形成の基本(NISA特設ウェブサイト)」(2026年9月26日閲覧)
ご注意
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品・投資手法を推奨するものではありません。投資には価格の変動によって損失が生じ、元本を下回るリスクがあります。株式の配当は、業績などにより減配・無配となる可能性があります。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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