保険の入りすぎを防ぐには?公的保障と貯金で足りる部分、民間保険が必要な場面

保険の入りすぎを防ぐには、公的な保障と貯金でまかなえる部分を先に確かめ、残った「貯金では払いきれない大きな損失」にだけ民間の保険を使うことです。会社員は健康保険の高額療養費で1か月の医療費の自己負担に上限があり、標準報酬月額26万円以下の人なら、医療費が100万円かかった月でも窓口負担は6万1,500円までです(協会けんぽ・2026年8月から)。生命保険文化センター(2025年)の調査では、直近の入院でかかった自己負担の平均は18.7万円でした。

二人以上の世帯は、生命保険に年平均35.3万円の保険料を払っています(生命保険文化センター・2024年度)。勧められるままに入った保険が、本当に必要な保障なのかを確かめる機会は多くありません。この記事では、生命保険文化センター・協会けんぽ・日本年金機構・国税庁の資料をもとに、公的な保障で足りる部分、保険が必要になる場面、状況別の考え方、入りすぎのサインを整理します。特定の保険商品はすすめません。

目次

保険が「必要な場面」と「いらない場面」の分け方

保険は、みんなで少しずつお金を出し合い、めったに起きないが起きると大きな損失になることに備える仕組みです。そのため、向いているのは「起きる確率は低いが、起きると貯金では払えない」出来事です。

損失の大きさ\起きやすさよく起きるめったに起きない
小さい(貯金で払える)貯金で払う(例:風邪の通院、スマホの画面割れ)貯金で払う(例:数日の入院)
大きい(貯金では払えない)生活を見直す保険で備える(例:子どもが小さいうちの死亡、他人にけがをさせたときの賠償)

※当サイトの考え方

数日の入院や通院のように、損失が貯金で払える範囲なら、保険料を払い続けるより、その分を貯めておくほうが合理的なことが多いと当サイトでは考えています。保険料には、保険会社の経費なども含まれているためです。

公的な保障で、すでにカバーされている部分

会社員は、給料から天引きされる社会保険料で、すでに多くの保障を持っています。民間の保険を考える前に、ここを確かめます。

起きたこと公的な保障内容
病気やけがで入院・手術高額療養費(健康保険)1か月の自己負担に上限。2026年8月からは年間の上限もある
病気やけがで仕事を休んだ傷病手当金(健康保険)4日目から、標準報酬月額をもとにした日額の3分の2を通算1年6か月まで
亡くなった(子どもがいる)遺族基礎年金・遺族厚生年金子のある配偶者や子に年金が出る
障害が残った障害基礎年金・障害厚生年金障害の程度に応じて年金が出る

出典:協会けんぽ「高額療養費」「傷病手当金」、日本年金機構「遺族基礎年金」をもとに当サイト作成

医療費には上限がある

協会けんぽによると、2026年8月からの自己負担の上限(70歳未満)は、所得区分ごとに次のとおりです。

所得区分(標準報酬月額)月の上限年間の上限
ウ:28万〜50万円8万5,800円+(総医療費−28万6,000円)×1%53万円
エ:26万円以下6万1,500円53万円

出典:協会けんぽ「高額療養費」をもとに当サイト作成(主な区分のみ)

食事代や、個室を希望したときの差額ベッド代は上限の計算に入りません。それでも、保険が使える治療費の負担には天井があります。制度の詳しい内容は高額療養費制度とは?で紹介しています。

子どもがいる家庭には遺族年金がある

日本年金機構によると、遺族基礎年金は、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れます。2026年度の金額は、子のある配偶者で年84万7,300円に、子1人目・2人目は各24万3,800円が加算されます。子が1人なら年109万1,100円、月にすると約9万1,000円です(当サイトの計算)。会社員だった人が亡くなった場合は、これに遺族厚生年金が加わります。

実際の入院でかかったお金

生命保険文化センターの「2025年度 生活保障に関する調査」によると、過去5年間に入院した人の直近の入院は、次のようなものでした。

項目平均
入院日数16.0日
自己負担費用(治療費・食事代・差額ベッド代・交通費・日用品などの合計)18.7万円
1日あたりの自己負担費用2万4,300円

出典:生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」をもとに当サイト作成。自己負担費用は高額療養費を使った後の金額

18.7万円は、生活防衛資金を用意している人なら貯金で払える金額です。一方、同じ調査で、病気の入院に備える保険(疾病入院給付金が出る保険)の加入率は65.6%で、加入している金額は日額8,500円が平均でした。

医療保険の保険料を、仮に月3,000円として20歳から60歳まで40年払うと、総額は144万円になります(当サイトの試算)。入院のときの出費に備えるために、どちらがよいかは、貯金の額や働き方で変わります。

状況別:民間保険を考えたほうがよい場面

同じ年代でも、家族の状況で必要な保障は大きく変わります。

状況死亡保障医療の保障考え方
独身・一人暮らし基本は不要(生活を支えている家族がいない)生活防衛資金があれば最低限自分が働けなくなったときの収入減を優先して考える
共働き・子どもなし小さめでよいことが多い生活防衛資金で足りるか確認互いの収入だけで暮らせるかを確かめる
子どもがいる・片働き必要になりやすい生活防衛資金とのバランス遺族年金で足りない生活費を、子が独立するまでの期間で計算する
住宅ローンを借りている団体信用生命保険で、ローン残高はまかなわれることが多い—団信と別の死亡保障が重なっていないか確認

※当サイトの考え方

死亡保障が必要になるのは、自分の収入で生活している家族がいるときです。子どもが1人いる片働きの家庭なら、遺族年金(遺族基礎年金だけで月約9万1,000円)と配偶者の収入で足りない生活費を、子どもが独立するまでの年数分だけ考えます。子どもが育つにつれて必要な金額は減っていくため、ずっと同じ金額の保障が必要なわけではありません。

自分の不注意で他人にけがをさせたり、物を壊したりしたときの損害賠償は、何千万円にもなることがあり、貯金ではまかなえません。自転車に乗る人などは、こうした賠償に備える保険を確かめておくと安心です(火災保険や自動車保険の特約として付いていることもあります)。

入りすぎのサインをチェックする

いま入っている保険を、次の表で見直してみてください。

入りすぎのサイン確かめること
独身なのに、数千万円の死亡保障がある自分が亡くなって生活に困る人がいるか
同じ入院の保障を、複数の保険・共済で持っている会社の団体保険、共済、クレジットカードの付帯保険と重なっていないか
「貯金代わり」の保険で、毎月の貯金ができていない途中で解約すると払った保険料を下回らないか、生活防衛資金はあるか
保険料が上がる更新型で、更新のたびに見直していない次の更新でいくらになるか
保障の中身を説明できない保険証券で、何が起きたときにいくら出るかを書き出せるか

※当サイトの整理

払った保険料の一部は、生命保険料控除として所得から差し引けます。国税庁によると、2012年以降に契約した保険は、一般・介護医療・個人年金の3区分でそれぞれ最高4万円、合計12万円まで控除できます。ただ、控除で戻る税金は保険料の一部です。税金のために保険に入る必要はありません。控除の申告方法は年末調整のやり方と令和8年分の変更点で紹介しています。

よくある質問

医療保険は入らなくても大丈夫ですか

入院や手術の費用は、高額療養費で上限があり、平均的な入院の自己負担は18.7万円です(生命保険文化センター・2025年)。生活防衛資金としてその程度のお金を預金で用意できていれば、医療保険がなくても困らない人は多いと当サイトでは考えています。貯金が少ないうちや、自営業で傷病手当金がない人は、事情が変わります。また、遺伝子的な要因でがん等のリスクが高いもあります。発覚後は入れませんので、一概に不要と決めつけず、各々の状況にあって良いものがあれば入るのはありだと考えています。

若いうちに入ったほうが保険料は安いのでは

年齢が若いほど月々の保険料は安くなりますが、払う期間は長くなります。必要のない保障に長く払い続けるなら、総額では負担が大きくなります。保障が必要になった時点(結婚や出産など)で考えれば十分なことが多いです。

保険の相談はどこにすればよいですか

保険の販売窓口は、保険を売ることで手数料を受け取る立場です。中立的な立場の相談先はお金の相談はどこにすればいい?で紹介しています。

まとめ

保険の入りすぎを防ぐには、公的な保障と貯金でまかなえる部分を先に確かめます。会社員は高額療養費で医療費に上限があり、病気で休めば傷病手当金があり、子どもがいれば遺族年金もあります。平均的な入院の自己負担は18.7万円で、生活防衛資金で払える範囲です。民間の保険は、子どもが小さいうちの死亡や、他人への損害賠償のように、貯金では払いきれない損失に絞って使います。

まずは、いま入っている保険の保険証券を出して、「何が起きたら、いくら出るか」と「毎月の保険料」を1枚の紙に書き出してみてください。公的な保障と重なっている部分が見えれば、減らせる保険料がはっきりします。お金の基本の全体像は金融リテラシーってなに?にまとめています。

参考文献

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