金利が上がると、預金や国債の利息は増え、変動金利のローンは返済が重くなり、すでに発行された債券の価格は下がります。日本銀行は物価の上昇を受けて、2024年3月にマイナス金利をやめ、2026年9月には政策金利を「1.25%程度」まで引き上げました。2026年10月に募集された個人向け国債(固定5年)の利率は年2.39%で、物価上昇率(2026年8月は1.9%)を上回る水準になっています(日本銀行・財務省・総務省統計局)。
「金利のある世界」に戻ったといわれても、自分の預金やローンにどう効くのかは見えにくいものです。この記事では、日本銀行・財務省・総務省・住宅金融支援機構・日本証券業協会の資料をもとに、インフレと金利の関係、政策金利の推移、金利が上がったときに家計の何が変わるかを、当サイトの試算とあわせて整理します。
インフレと金利はセットで動く
インフレ(物価が上がり続け、お金の価値が下がる状態)と金利は、別々のニュースのようでいて、深くつながっています。日本銀行は消費者物価の上昇率2%を「物価安定の目標」にしており、物価の上がり方に合わせて政策金利を調整しています。
日本銀行によると、一般に、金利が下がるとお金を借りやすくなって経済活動が活発になり、物価には押し上げる力が働きます。反対に金利が上がると借りにくくなり、物価には押し下げる力が働きます。物価が上がりすぎないように金利を引き上げ、景気が冷え込みすぎないように金利を下げる、というのが基本の考え方です。
物価の仕組みそのものは、インフレとは?で詳しく紹介しています。
見るべきは「実質金利」
預金や国債の利率を見るときは、物価の上昇率を差し引いた「実質金利」で考えると実態がつかめます。
| 例 | 名目の金利 | 物価上昇率 | 実質金利(おおよそ) |
|---|---|---|---|
| 金利0.2%の預金 | 年0.2% | 1.9% | −1.7%(買えるものが減っていく) |
| 個人向け国債(固定5年) | 年2.39% | 1.9% | +0.5%程度(物価を少し上回る) |
※名目の金利は財務省「個人向け国債の発行条件等」(2026年10月募集)、物価上昇率は総務省統計局の消費者物価指数(総合・2026年8月)。実質金利は名目の金利から物価上昇率を引いた当サイトの概算で、税金は考慮していない
物価が金利以上のペースで上がっていれば、預けたお金の実質的な価値は減っていきます。反対に、物価上昇率を上回る金利がつくなら、元本が保証された商品でも価値を保ちやすくなります。
日本の政策金利の推移
日本銀行は2016年からマイナス金利政策を続けていましたが、2024年に終了し、そこから段階的に政策金利を引き上げています。
| 時期 | 政策金利(無担保コールレート・翌日物) |
|---|---|
| 2016年2月〜 | −0.1%(マイナス金利政策) |
| 2024年3月 | マイナス金利を解除(0〜0.1%程度) |
| 2024年7月 | 0.25%程度 |
| 2025年1月 | 0.5%程度 |
| 2025年12月 | 0.75%程度 |
| 2026年6月 | 1.0%程度 |
| 2026年9月 | 1.25%程度 |
出典:日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」(2024年3月)、「金融市場調節方針の変更について」(2024年7月・2025年1月・2025年12月・2026年6月・2026年9月)をもとに当サイト作成
2026年9月の引き上げについて、日本銀行は消費者物価の基調的な上昇率が2%に近づいていることを理由に挙げています(日本銀行・2026年)。2年半ほどで政策金利が1%以上動いたことになり、預金やローンの金利にも少しずつ反映されています。
長い期間の金利も上がっています。財務省によると、2026年10月の個人向け国債(変動10年)の基準になった10年国債の金利は3.10%でした。
金利が上がると家計の何が変わるか
同じ「金利の上昇」でも、お金を預けている人と借りている人では、影響が正反対になります。
| お金の種類 | 金利が上がったときの影響 | 確かめること |
|---|---|---|
| 普通預金・定期預金 | 利息が増える(反映は銀行ごと・時期にずれ) | 自分の銀行の今の金利 |
| 個人向け国債 | 新しく買う分の利率が上がる。変動10年は半年ごとに利率が見直される | 募集中の利率 |
| すでに持っている債券・債券型の投資信託 | 価格が下がる | 満期まで持つか、途中で売るか |
| 住宅ローン(変動金利) | 返済額が増える可能性がある | 契約の金利の見直し時期 |
| 住宅ローン(固定金利) | 借りた後の返済額は変わらない。これから借りる人の金利は上がる | 固定期間の終わる時期 |
出典:日本銀行、財務省、日本証券業協会の資料をもとに当サイト作成
預金の利息はどれだけ増えるか
100万円を1年預けたときの利息を、金利ごとに並べるとこうなります。
| 金利 | 1年間の利息(税引前) | 税引後(20.315%を差し引く) |
|---|---|---|
| 年0.02% | 200円 | 約160円 |
| 年0.2% | 2,000円 | 約1,590円 |
| 年1.0% | 1万円 | 約7,970円 |
| 年2.39%(固定5年の国債と同じ利率) | 2万3,900円 | 約1万9,040円 |
※当サイトの試算。預金の利子には所得税・復興特別所得税・住民税をあわせて20.315%が源泉分離課税される(国税庁)
100万円の利息は、金利が0.02%から0.2%に上がっても、年に1,800円しか変わりません。預金の金利は銀行ごとに違い、政策金利の変更がすぐに反映されるとも限らないため、通帳やアプリで自分の口座の金利を一度確かめておくと、比べる基準ができます。
変動金利の住宅ローンは返済額が増える
住宅金融支援機構(2026年)が2026年1月に行った調査では、住宅ローンを借りた人の75.0%が変動型を選んでいました。前回の調査から4.0ポイント減ったものの、まだ大半を占めています。
3,000万円を35年(元利均等返済・ボーナス返済なし)で借りた場合の返済額を、金利ごとに試算しました。
| 金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 年0.8% | 約8万1,900円 | 約3,441万円 |
| 年1.3% | 約8万8,900円 | 約3,736万円 |
| 年1.8% | 約9万6,300円 | 約4,046万円 |
| 年2.3% | 約10万4,100円 | 約4,371万円 |
※当サイトの試算。借入期間中ずっとその金利だった場合の計算で、実際の変動金利ローンでは、金利の見直しや返済額の変更のルールが契約によって決まっている
金利が0.5%上がるごとに、毎月の返済は7,000〜8,000円ほど増え、35年間の総額では約300万円ずつ増えます。変動金利で借りている人は、契約書で「金利の見直し時期」と「返済額が変わる時期」を確かめておくと、家計への影響を早めに見積もれます。
すでに持っている債券の価格は下がる
日本証券業協会は、債券の価格と金利を「シーソーの関係」と説明しています。世の中の金利が上がれば、あとから発行される債券のほうが高い利子を受け取れるので、低い利子の古い債券は人気がなくなり、価格が下がります。
たとえば、利率1%・残り10年の債券は、市場の金利が3%に上がると、価格は100円から約83円まで下がる計算です(当サイトの試算。単純な複利計算による理論価格)。満期まで持てば額面の100円で戻りますが、途中で売ると損が出ます。
この点で、個人向け国債は少し性質が違います。財務省によると、発行から1年が過ぎれば、直前2回分の利子相当額(税引前×0.79685)を差し引いた額で、いつでも国に買い取ってもらえます。市場の金利が上がっても、元本を割り込んで換金することはありません。
金利が上がる時期に確かめておきたいこと
状況によって、確かめることは変わります。
| あなたの状況 | 確かめること |
|---|---|
| 預金が中心で、借金はない | 預金金利と物価上昇率の差。数年使わないお金の置き場所 |
| 変動金利の住宅ローンを返している | 金利の見直し時期、返済額が増えたときの家計の余裕 |
| これから住宅ローンを借りる | 変動と固定の金利差と、金利が上がったときの返済額 |
| カードローン・リボ払いの残高がある | もともと金利が高いため、金利の動きより残高を減らすことを優先 |
※当サイトの整理
リボ払いの金利の重さはリボ払いの仕組み、金利が複利で効いてくる仕組みは単利と複利の違いとは?で紹介しています。
よくある質問
政策金利が上がると、預金金利もすぐ同じだけ上がりますか
同じだけ、すぐに上がるとは限りません。預金の金利は銀行がそれぞれ決めるもので、政策金利の変更から反映までに時間がかかったり、上げ幅が小さかったりします。自分の口座の金利は、銀行のウェブサイトや通帳で確かめられます。
金利が上がるのは悪いことですか
立場によって違います。預金が多い人には利息が増えるという面があり、ローンを借りている人には返済が重くなる面があります。日本銀行は、賃金と物価がともに緩やかに上がっていく中で、金利を少しずつ調整するとしています。
個人向け国債の利率はいつ変わりますか
財務省によると、個人向け国債は毎月発行され、その時の市場金利をもとに利率が決まります。変動10年は、買った後も半年ごとに利率が見直されます。固定5年・固定3年は、買った時の利率が満期まで変わりません。
まとめ
金利が上がると、預金や新しく買う国債の利息は増え、変動金利のローンの返済は重くなり、すでに持っている債券の価格は下がります。日本の政策金利は2024年3月のマイナス金利解除から、2026年9月の1.25%程度まで段階的に上がってきました。お金の価値を守れているかは、名目の金利から物価上昇率を引いた実質金利で考えると分かります。
まずは、自分の普通預金の金利と、借りているお金(住宅ローン・奨学金・カードの分割払いなど)の金利を書き出してみてください。預ける側と借りる側のどちらの影響が大きい家計なのかが分かれば、次に何を確かめればよいかが決まります。お金の基本の全体像は金融リテラシーってなに?にまとめています。
参考文献
- 日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」(2024年3月19日)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について」(2024年7月31日)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2025年1月24日)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2025年12月19日)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
- 日本銀行「2%の「物価安定の目標」」(2026年10月13日閲覧)
- 日本銀行「金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?(教えて!にちぎん)」(2026年10月13日閲覧)
- 財務省「個人向け国債の発行条件等」(2026年10月7日)
- 財務省「個人向け国債 商品概要」(2026年10月13日閲覧)
- 総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)8月分」(2026年9月18日)
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」(2026年2月20日)
- 日本証券業協会「債券価格と金利って、どういう関係なの?(投資の時間)」(2026年10月13日閲覧)
- 国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)」(2026年10月13日閲覧)

コメント