税金と社会保険の仕組み|会社員の給料から引かれるお金と、その見返り

会社員の給料からは、所得税・住民税の2つの税金と、健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険料が差し引かれています。年収360万円(月給30万円・賞与なし)の26歳の会社員なら、1年間に払う税金と社会保険料は合わせて約72万円で、年収のおよそ2割です(当サイトの試算)。このうち約7割を占める社会保険料は、病気・出産・失業・老後のときの給付として返ってくる「保険」のお金です。

給与明細の控除欄を見ても、どれが税金でどれが保険料なのか、払ったお金が何に使われるのかは書かれていません。この記事では、国税庁・総務省・協会けんぽ・日本年金機構・厚生労働省・財務省の資料をもとに、差し引かれるお金の一覧、年収360万円の場合の金額、税金と保険料の決まり方の違い、受けられる保障、税金の使い道を整理します。

目次

給料から引かれる税金と社会保険料の一覧

会社員の給料から差し引かれるお金は、次の6つです(40歳以上は介護保険料も加わります)。

種類名前何のためのお金か2026年度の率など会社の負担
税金所得税国の予算の財源所得に応じて5〜45%(復興特別所得税を加算)なし
税金住民税都道府県・市区町村の財源所得割10%+均等割なし
社会保険健康保険病気・けが・出産のときの医療と給付9.85%(協会けんぽ東京支部)半分
社会保険子ども・子育て支援金児童手当の拡充など子育て支援0.23%(2026年4月分から)半分
社会保険厚生年金保険老後・障害・死亡のときの年金18.3%半分
社会保険雇用保険失業・育児休業のときの給付本人1,000分の5(一般の事業)本人より多い

出典:国税庁、総務省、協会けんぽ、日本年金機構、厚生労働省の資料をもとに当サイト作成。介護保険料(40〜64歳)は協会けんぽで1.62%

税金は、払った金額と受けられるサービスが直接結びつかない「みんなのためのお金」です。社会保険料は、加入している人が病気や失業などで困ったときに給付を受けるための「保険料」で、払った人に権利が生まれます。同じ天引きでも、性質はまったく違います。

年収360万円の会社員が払っている金額

26歳・一人暮らし、月給30万円(賞与なし)で、東京都の協会けんぽに加入している会社員を例に、1年分を試算しました。

項目本人の負担(年額)会社の負担(年額)
健康保険17万7,300円17万7,300円
子ども・子育て支援金4,140円4,140円
厚生年金保険32万9,400円32万9,400円
雇用保険1万8,000円3万600円
所得税(復興特別所得税を含む)4万4,400円—
住民税約15万600円—
合計約72万3,800円約54万1,400円

※当サイトの試算。社会保険料は協会けんぽ東京支部の保険料額表(標準報酬月額30万円・40歳未満)、雇用保険料は2026年度の料率で、12か月同じ金額とした。所得税は令和8年分のルール(基礎控除104万円)で、扶養家族なし・ほかの控除なし。住民税は2026年の所得をもとに翌年度にかかる額の概算(均等割と森林環境税を含む)。会社の負担には労災保険料などは含めていない

本人が払う約72万円のうち、社会保険料が約53万円、税金が約20万円です。社会保険料のほうが税金よりずっと大きいことは、明細を見ているだけでは気づきにくい点です。

もう一つ見落としやすいのが、会社の負担です。健康保険・厚生年金などは会社と本人が半分ずつ払う仕組みなので、会社も年に約54万円をこの人のために納めています。会社から見た人件費は、額面の360万円よりも多いということです。

税金は「所得」から控除を引いた額にかかる

所得税と住民税は、どちらも「所得」に対してかかります。給料の額面にそのまま税率をかけるわけではありません。

手順内容年収360万円の例(所得税)
1給与収入から給与所得控除を引いて「給与所得」を出す360万円 → 244万円
2社会保険料控除・基礎控除などの所得控除を引く244万円 −52万8,840円 −104万円
3残った「課税所得」に税率をかける87万1,000円 × 5%
4復興特別所得税(2.1%)を加える年4万4,400円

出典:国税庁「No.1199 基礎控除」「No.1410 給与所得控除」をもとに当サイト試算

払った社会保険料は全額が「社会保険料控除」として所得から差し引かれるので、その分だけ税金が軽くなります。2026年(令和8年分)は税制改正で、合計所得金額489万円以下の人の基礎控除が104万円に、給与所得控除の最低額が74万円に引き上げられました(国税庁)。改正の詳しい内容と、還付がどう変わるかは年末調整のやり方と令和8年分の変更点で扱っています。

住民税は「前の年の所得」で決まる

総務省によると、個人住民税は所得割(税率10%)と均等割からなり、前の年の1月から12月までの所得をもとに計算されます。所得税は今年の給料から毎月差し引かれて年末調整で精算されますが、住民税は1年遅れで翌年6月から天引きされます。社会人2年目に手取りが減ったように感じるのは、このずれのためです。

社会保険料は「標準報酬月額」に料率をかけて決まる

健康保険と厚生年金の保険料は、所得や控除とは関係なく、給料を一定の幅で区切った「標準報酬月額」に料率をかけて計算します。毎年4月から6月の給料(残業代や通勤手当を含む)をもとに、9月から1年間の金額が決まります(日本年金機構)。

ここ数年は、保険料のしくみが少しずつ変わっています。

時期変わったこと
2017年9月厚生年金の保険料率の引き上げが終わり、18.3%で固定
2024年度住民税の均等割とあわせて、国の森林環境税(年1,000円)の徴収が始まる
2026年3月分協会けんぽ東京支部の健康保険料率が9.91%から9.85%に(全国平均は9.9%)
2026年4月雇用保険の本人負担が1,000分の5.5から1,000分の5に(一般の事業)
2026年4月分子ども・子育て支援金(0.23%)の徴収が始まる
2026年分所得税の基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低額が74万円に

出典:日本年金機構、総務省、協会けんぽ、厚生労働省、国税庁の資料をもとに当サイト作成

協会けんぽ(2026年)によると、40歳から64歳までの人は、健康保険料に介護保険料(1.62%)が上乗せされます。40歳の誕生日の前日がある月から天引きが始まるので、同じ給料でも手取りが月に数千円減ります。

払った社会保険料で受けられる保障

社会保険料は、条件を満たせば給付として戻ってくるお金です。会社員が受けられる主な給付を並べると、次のようになります。

困ったとき制度受けられるもの
病院にかかった健康保険医療費の窓口負担は原則3割
医療費が高額になった健康保険(高額療養費)1か月の自己負担に上限がある
病気やけがで仕事を休んだ健康保険(傷病手当金)4日目から、標準報酬月額をもとにした日額の3分の2を通算1年6か月まで
会社を辞めて仕事を探す雇用保険(基本手当)離職前の賃金のおよそ5〜8割
老後厚生年金・国民年金原則65歳から老齢年金
障害が残った・亡くなった厚生年金・国民年金障害年金、遺族年金

出典:協会けんぽ「傷病手当金」「高額療養費」、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、日本年金機構の資料をもとに当サイト作成

月給30万円の人が病気で1か月休んだ場合、傷病手当金は約20万円になります(当サイトの試算。標準報酬月額30万円÷30日×3分の2×30日)。給料の全額ではありませんが、民間の保険に入っていなくても、収入がゼロになるわけではありません。医療費の上限については高額療養費制度とは?、年金の受け取り額は公的年金の仕組みで詳しく紹介しています。

国の税金は何に使われているか

税金の使い道は、国の予算を見ると分かります。財務省によると、2026年度の一般会計予算は122.3兆円です。

歳出の主な項目金額割合
社会保障関係費(年金・医療・介護・子育てなど)39.1兆円31.9%
国債費(借金の返済と利払い)31.3兆円25.6%
地方交付税交付金等(地方への配分)20.9兆円17.1%
その他(防衛・公共事業・教育など)31.1兆円25.4%

出典:財務省「令和8年度予算のポイント」をもとに当サイト作成(割合は当サイトの計算)

最も大きいのは社会保障関係費で、年金や医療の給付は、保険料だけでなく税金でも支えられています。歳入の側を見ると、税収は83.7兆円で、足りない29.6兆円を国債(公債金)でまかなっています。公債依存度は24.2%です(財務省・2025年12月)。

よくある質問

社会保険料を払うのは損ではないのですか

払った額と受け取る額だけで比べると、損得は人によって変わります。ただ、健康保険・厚生年金は会社が保険料の半分を負担しており、病気・障害・長生きといった、いつ・いくら必要になるか分からないリスクに一生備えられる点は、民間の保険では同じ条件で用意しにくい部分です。

手取りを増やす方法はありますか

税金は、所得控除を使うと軽くなります。会社員が自分で使える控除には、iDeCoの掛金(全額が所得控除)、生命保険料控除、医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除)などがあります。社会保険料は料率と標準報酬月額で決まるため、個人の工夫で下げるのは難しいお金です。

給与明細のどこを見ればよいですか

控除欄の「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」「所得税」「住民税」の5つを、この記事の表と見比べてください。項目ごとの見方は給与明細の見方で紹介しています。

まとめ

会社員の給料から引かれるお金は、国や自治体の財源になる税金と、自分が困ったときに給付を受けるための社会保険料に分かれます。年収360万円の会社員なら、1年間に約72万円を払い、そのうち約53万円が社会保険料です。税金は所得から控除を引いた額にかかり、社会保険料は標準報酬月額に料率をかけて決まります。

次の給料日には、給与明細の控除欄を税金と社会保険料に分けて、それぞれの合計を出してみてください。1年分(12倍)にすると、自分が何にいくら払っているのかがはっきりし、使える控除や受けられる給付を調べる手がかりになります。全体の学び方は金融リテラシーってなに?にまとめています。

参考文献

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